歯が溶ける?酸蝕歯とは

虫歯や歯周病は毎日の歯磨きなどで予防することができます。しかし、歯磨きだけでは防げない歯の病気があることはご存知でしょうか?虫歯や歯周病に続いて、歯を失う原因の1つに「酸蝕歯(さんしょくし)」という歯の病気があります。酸蝕歯は、歯周病、虫歯に次ぐ「第三の歯科疾患」として問題になっており、2015年に東京在住の15歳から80歳までの1108人を対象に行われた調査によると、酸蝕歯がある人の割合はなんと26.1%と、約4人に1人が酸蝕歯になっているという結果が示され、患者数は年々増加していると言われています。

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酸蝕歯とは

み物や食べ物、または胃酸の「酸(さん)」によって歯が溶けることを「酸蝕歯」といいます。酸性が強いものを食べたり飲んだりすると、酸によって歯が溶け出す脱灰(だっかい)のリスクがあり、歯のエナメル質からリン酸カルシウムの結晶が溶け出してしまう可能性があるのです。歯の表面のエナメル質は、酸性度を示すpHの値が5.5以下になると、溶けやすくなります。酸性度の高い飲食物を頻繁にとっている人は注意が必要で、胃食道逆流症など胃や食道の病気、あるいは暴飲暴食といった生活習慣などで、胃酸が逆流する状態が続いていると、酸蝕歯になりやすくなります。酸蝕歯は、進行スピードは非常にゆっくりで、以前は大人になって罹患率が上がるものだと思われてきましたが、食生活環境が変化したことなどから、お子さまでも酸蝕症になってしまう可能性が非常に高くなっていると言われています。

酸蝕歯になる原因の飲食物は、みかん、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類や、イチゴ、パイナップル、ブドウなどのフルーツ全般、甘い炭酸飲料やスポーツドリンク、エナジードリンクなども原因と言われており、そのほかにも黒酢やクエン酸、ビタミンCなどの調味料やサプリメント、アルコールも酸蝕歯を引き起こす原因と言われています。酸蝕歯の特徴はさまざまで、初期症状は冷たいものや熱いものを食べたり飲んだりすると、歯がしみたり(知覚過敏)、摩擦によって歯の表面や角が丸みを帯びてくるでしょう。歯が薄くなることで象牙質が見えるようになり、歯がやや黄色く見えたりするなどの症状が現れます。

中期以降の症状は、知覚過敏が重症化し、歯の先端が薄くなることで透明に見えるようになります。歯の先端のひび割れや表面に小さな凹みが表れ、歯の表面にツヤがなくなってきます。また象牙質がさらに見えてくるため、歯が茶色っぽくなり、詰め物や被せ物が外れやすくなったりします。酸蝕歯と気付かない症状も多く、治療開始が遅れることも少なくありません。不安な点があれば速やかに歯科医院の受診を推奨します。

酸蝕歯を放置したらどうなる?

酸蝕歯を放っておくと、見た目が悪くなってしまうだけでなく、重症化すれば歯を失うこともあります。初期症状であれば、エナメル質を強化する歯磨き粉を選ぶなど、セルフケアを行うことも対策になりますが、重症化する前に歯科医に相談することを推奨します。

歯科医院で治療を行う場合、初期症状の段階であれば、薬剤を塗り、経過観察を行うことがあります。中期以降の場合は、詰め物や被せ物をします。詰め物や被せ物にはさまざまな種類があり、セラミックやジルコニアといった自然な歯に近い色の素材を選択することもできます。そのほかにも3DS治療というものがあり、歯の再石灰化を促す薬剤が入れられる歯型に合わせたマウスピースを作製し、装着する治療法があります。
また、ダメージが大きい場合などの最終手段で抜歯が行われます。

酸蝕歯を予防するには

酸性の食べ物や飲み物ばかりを摂取していると脱灰が起こってしまい、酸蝕症を引き起こすため、酸蝕歯は生活習慣を少し見直すだけでも予防効果が期待できます。酸性かアルカリ性かは、pH値によって示され、pH値の数字が小さいほど酸性が強く、大きいほどアルカリ性が強いことを表しており、中性がpH値が7で、それよりも数値が小さければ酸性、大きければアルカリ性と分けられます。歯の表面を覆っているエナメル質は、pH値が5.5以下の酸性のものに対して弱いと言われており、炭酸飲料などはpH値が2.22.9、黒酢はpH値が3.1程度、オレンジなどの果汁飲料はpH4.0前後が多く、ビールもpH5.0以下のものが多いです。また食べ物の例の一つは、柑橘系の果物と言えるでしょう。レモンはpH値が2.1、グレープフルーツは3.2、オレンジやミカンは3.53.6と、いずれも酸蝕歯になってしまうリスクが十分にある数値です。酢を使ったドレッシングもpH3.14.0のものが多いため、ドレッシングの使い過ぎには注意しましょう。

このように酸の強い食べ物や飲み物を減らすように心掛けたり、酸の強いものを食べたら、酸を口の中に残した状態を避けるために、水やお茶を飲んだり、うがいをして洗い流しましょう。エナメル質が柔らかくなっている時間帯を避け、食後から30分以上経過してから歯磨きを行うと良いでしょう。その際に、エナメル質を傷つけないために硬い歯ブラシは避け、柔らかい歯ブラシで優しくブラッシングするといいでしょう。そのほかにも、エナメル質の保護や酸を弱める働きが期待できる唾液を増やすために、ガムを噛んだり、飴をなめることも効果的です。

胃酸は歯が溶ける大きな原因

胃酸の酸性度は1.0~2.0pHと言われており、この数値はレモンや炭酸飲料と同等で、歯が溶ける大きな原因となります。胃酸の食道への逆流を起こす原因は、逆流性食道炎や摂食障害、食べ過ぎなどによるげっぷ、寝酒深酒などが考えられます。

また加齢とともに、下部食道括約筋は弱くなるため、食べ過ぎや脂っこい夕食、夜遅い食事は就寝時に胃酸の逆流を起こす原因となります。しかも、睡眠時は唾液がほとんど出ないために胃酸を中和することができないため、就寝前の食事や飲酒は控えた方が賢明でしょう。もし胃酸が逆流した場合は、重曹の水溶液で繰り返しうがいをして中和させるのが望ましいです。

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