日本では、笑ったときに見える「八重歯」は可愛いとされています。そのため近年では、「付け八重歯」といった人工歯を貼り付ける治療まであります。しかし、実は八重歯は不正咬合(悪い歯並び)の一種なのです。もともと日本人は、顎が小さいという特徴があり、さらに生活環境や遺伝により顎の骨がうまく発達しないことによって、歯がキレイに並ぶためのスペースがなくなってしまい不正咬合が発生します。他の永久歯より遅く生えてくる「犬歯」は、歯列から外れやすいため、八重歯になりやすいのです。
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八重歯とは
八重歯は、上顎の犬歯という前から3番目の歯が外側にはみ出してしまった叢生という不正咬合の一つです。八重歯は放っておくと、様々なリスクを引き起こしてしまう原因になることがあります。また、噛み合わせから外れていることで、他の歯の負担を大きくしていることも考えられます。さらに、八重歯は欧米などでは歯の形態から「ドラキュラの歯」とも呼ばれ、忌み嫌われているのです。
八重歯の原因
八重歯の原因は、乳歯から永久歯への生え変わりの順序にあり、上顎の犬歯が生えてくるのは、11〜12歳ごろです。この年齢になると、ほとんどの乳歯が永久歯に生え変わっており、犬歯は最後の方に生え変わる場合が多いのです。(第二大臼歯や親知らずなどよりは先に生える)そのため、犬歯が生えてくる時に生えるための十分なスペースがなくなっていることがあり、外側にはみ出して生えてしまうことで八重歯になるのです。
八重歯は引き起こす悪影響
虫歯や歯周病
八重歯周辺は歯が重なっているため、歯ブラシが届きづらい箇所があることで、磨き残しが多くなってしまいます。そのため、歯垢(プラーク)などの汚れが溜まってしまい、虫歯や歯周病のリスクを高くしてしまいます。
顎関節症になりやすい
犬歯には下顎の位置を正しい位置に持っていく大切な役割がありますが、八重歯の場合、上顎と下顎の犬歯同士が接触していないため、下顎の位置や動きが不安定になってしまい、顎関節に大きな負荷がかかることで、顎関節症のリスクを高くしてしまう場合があるのです。
歯茎が下がりやすい
歯を支えている歯槽骨の厚みは、奥歯より前歯の方が薄い傾向にあります。八重歯は歯列から外にはみ出している分、歯槽骨がさらに薄くなってしまうため歯茎が弱くなり、ブラッシングなどの刺激によって歯茎が下がってしまうので、歯が長く見るようになります。
他の歯への負担が増す
八重歯は、ものをうまく噛めません。そのため、上顎の噛める歯が減ることになるので、1本の歯にかかる噛み合わせの力の負担が大きくなってしまいます。噛み合わせによる強い負担は、将来的に咬合性外傷とよばれる状態を引き起こすことがあり、歯槽骨などの歯を支えている歯周組織を弱らせてしまいます。
口内炎の原因になることも
八重歯は、とがった箇所が頬の内側や唇にあたってしまい傷つけたり、慢性的な刺激が加わることで口内炎の原因になることもあります。また、転倒や事故などの際に、外側にはみ出している八重歯が頬や唇を切ってしまう危険性もあるのです。
知覚過敏になりやすい
犬歯は、食べ物を咀嚼するときに顎が横にずれた場合、犬歯の裏側の傾斜を使うことで、上の奥歯と下の奥歯に過剰な負担がかからないようになっています。これを犬歯誘導といいます。しかし八重歯の場合、犬歯誘導がしっかり機能しないため、横からの力に弱い奥歯は負担がかかり、すり減ったり割れたりすることで知覚過敏を引き起こしてしまう場合があります。
八重歯の矯正治療
ブラケット矯正治療
八重歯を治す方法としてブラケット矯正治療があります。中学生以上の場合は、八重歯の奥の第一小臼歯の抜歯をおこない、矯正治療をしていくのが一般的といわれています。八重歯は神経が深く丈夫な歯のため、抜歯しないケースが多いです。
ブラケット矯正治療は、金属製のブラケットを歯の表側、もしくは裏側に装着してワイヤーを通し、力を加えて引っ張ることで歯を動かしていく唇側矯正(表側矯正)が一般的です。費用が矯正治療の中でも安く抑えることができ、様々な症例にも対応ができる治療法ですが、装置が目立ちやすく、口内に装置が当たってしまうことで口内炎ができやすかったり、金属アレルギーを引き起こす場合もあります。その場合、装置を非金属のものに変えることもできますし、違う治療法を選択することも可能な場合があります。
舌側矯正(リンガル矯正)
歯の裏側にブラケットを装着する矯正方法です。表側から装置が見えないので、目立ちにくく、周囲に気付かれずに矯正治療がおこないやすいのですが、装置に舌が当たるため発音しづらく、慣れるまでに少し時間がかかります。また、高度な技術が必要なため、唇側矯正より高額になります。
マウスピース型矯正
マウスピース矯正は、透明なマウスピース型の装置を歯に装着して、定期的に動いた歯に合わせた新しいマウスピースと交換していくことで歯を動かしていく矯正方法です。装置に取り外しが自由なため、食事やブラッシングの際には外すことができます。しかし、1日に決められた装着時間を守らないと、思うように歯が動かないため注意が必要です。マウスピース型矯正治療の中でも、近年多くの方が「インビザライン」による治療をおこなっています。インビザラインは現在でも日々研究がおこなわれており、以前は治療が難しいとされていた難症例でも治療が可能になっています。
八重歯の矯正治療をお考えの方は、一度大分県の歯科医院に相談して頂くことをお勧めいたします。